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🌻ネタバレ感想|西田東『夜が終わるまで』|何度でも読みたくなる珠玉の世界

「幽霊はやめてくれ…生きててくれよ…」

一読、何も言えなくなってしまったので寝かせておいた。

再読、もっと何も言えなくなった。

西田東の文学性の高さの前で何も言えなくなってしまう本。

表紙がとても美しい…

ざっくりポイント
  1. 司法研修所で同期だった検事の日浦・弁護士の影山・影山の弟の直人を中心として展開
  2. 触れたことがないはずの男と絡み合う夢を見る
  3. 夢か現か、生きているのか死んでいるのか、

あらすじ

あらすじ検事の日浦は、男に抱かれる夢を繰り返し見ていた。
その男は、司法研修所の同期だった弁護士の影山。

影山は、堅物の日浦にも何かと声をかけてくる気さくで明るい男で、
それゆえ日浦にとっては数少ない友人の一人であった。
そしてそんな影山は、日浦の担当事件の被害者となったのだーー。

暴力事件に巻き込まれた後、消息を絶った影山。
遺体はあがらず、日浦は望みを捨てきれないまま、事件を追い続けていた。
そんなある日、目を疑うほどに瓜二つの影山の弟・直人が現れる。

抱かれる夢は夜毎に現実味を増し、
まるで幻影のような弟・直人との接触によって、
日浦はいよいよ混乱を来していくのだがーーー。

(『夜が終わるまで』西田東)

最近姿を消してしまったゲイだという噂のあるイケメン俳優や眼鏡の紳士風おじさんが出てくる刑事ドラマのような雰囲気に、どう解釈しても説明のつかない霊的な現象が織り交ざる。

中心人物は、

  • 検事の日浦
  • 弁護士の影山
  • 影山の弟の直人

の三人

影山を暴行し川に遺棄したという犯人はすでに捕まっているのだが、

「暴行によって死んでいたかもわからないし土手のどこに捨てたかもわからない、よく覚えていない」

と言う。

この「身体が見つからない状態」を心にもち続けた日浦と直人の二人は次第に幻影か、はたまた本当に影山の幽霊か、判断のつかない現象を体験するようになっていく。

まず引っかかりを覚えたのが、影山と直人、二人の間の接点が後半まで明らかにされない点。

兄と弟がどんな関係だったのか、ということは弟の存在さえ知らなかった影山も、そして読者も認識していない。

はじめは日浦のことを嫌っている素振りを見せていた直人も、何度か合ううちに多少は信頼したのか、影山が器用に何でもこなしてしまう弟に嫉妬していたこと・逆に直人は人とうまく関わることが出来ずうちに引きこもるタイプで兄の社交性を羨んでいたことを話し出す。

順に明かされていくが、

  • 影山が不特定多数の人間と行為をし、その写真を収めたドライブを弟と共有していたこと
  • 影山が日浦に純粋な気持ちを向けていること
  • 自室に引きこもるようになってしまった直人が外に出ずとも仕事ができるよう影山が手助けしたこと

ここまで来ると、読者としても世間一般の兄弟像ではなく二人が強いつながりを持っていたことを感じ始める。

遺体の見つからない影山と入れ替わるように日浦の目の前に現れた直人は、影山が日浦に好意を寄せていたのと同じように兄の幻影に飲み込まれていく。

そうして雨の降るある晩、影山の遺体が見つからないまま二人は一線を越えてしまう。

この時の直人の様子は、目がうつろでどこか精神が不安定な印象があった。

思うに、影山自身に向けられていた二人の感情は媒体となっていた影山を失うことで混じり合い融合してしまったのではないだろうか。

単なる心霊現象とも考えられるが、とりあえずこの辺に落ち着こうと思う。

感想:心霊現象☆inドブ

一般的に水辺というのは霊を集めやすいと言われているが、今作でおいおいおいと突っ込んでしまった場面ではドブにハマってしまっていた。

影山の案件を抱えながら同時にいくつもの仕事もこなし疲労困憊の日浦は、影山の母親に話を聞こうと自宅までやってくる。

しかし、残念なことに母親は不在で中にいるはずの直人も応答しない。

仕方なく帰ろうとするのだが、ぼんやり道を歩いていたところ足を踏み外しドブに落ちてしまう。

下半身がズッポリ落ちてしまった日浦は道に上がろうとするのだが、何かが水の中でうごめいて日浦の下半身をまさぐっている。

日中の住宅街のドブに下半身うめて(*´Д`)ハァハァしてるスーツの男って誰かに見られたらどうするのぉ〜!!!あんた検事でしょ!!!仕事!!!

心霊現象には気をつけましょう。

おわりに

今回読んでいて思ったのは、行方不明者を捜索するというのは本当に大変なんだということ。

傷害や死体遺棄なんてのが絡んでいたからココまで様々な機関が関わり合っていたのだろうけど、東日本大震災や最近では川に流されてしまった男の子については警察や消防のみの関わりになるんだろうか。

なんにしても、「身体」が見つからないということは「生きているかもしれない」という望みを捨てきれない苦しさが永遠に続くのだなあと考えさせられた。

それから、最近見たBL漫画の中で抜きん出て表紙が美しい、

真っ黒なスーツを着て花の中で視線を合わせる二人…