「ご存知のとおり、俺の視力は0.1以下、ほぼなんも見えん!うっかり違う穴に…」
「違う穴なんかねーーーよ!!!」
別名義:野田彩子作品を読んでみたいなと思いつつ手が出せていない今日この頃。
新井煮干し子作品の中でも結構好きな「ふしぎなともだち」感想を書く。
- ロン毛ガチオタ由岐昴大(ゆきたかひろ)×オールマイティ一般ピーポー園瀬和(そのせなごむ)
- 何もかも正反対な二人がたまたま言葉をかわしたのをきっかけに接近していく
- 余計なものを書かず不思議な二人の奇妙な交流をじっくり味わえる良作
あらすじ
アニメのストラップから始まった不思議な交流ーー。
接点のなかった二人(オタクの由岐と非オタの和)が、
とあるアニメの話題から仲良くなって、
お互いの違いに戸惑いながらもいつしか距離が近付けていく。
だけど、普通の友達とは違うみたいで…??
実力派新人・新井煮干し子が送る異文化コミュニケーションの決定版!!特別描きおろし・トゥルーエンディング「沖縄にて」掲載!
(Rentaより引用)
ネタバレまとめ
新井煮干し子強化月間!
ということで、先月の『もらってください』熱が冷めないので過去作のお気に入り『ふしぎなともだち』を紹介しまーす。
場面展開
まずはじめに!
最初から最後まで、ほぼ主人公の二人しか出てこない上、学校か由岐の部屋かという狭い世界の中で話が進んでいきます。
きっかけは大学の食堂で、由岐が携帯につけていたアニメ関連のストラップをたまたま見つけた和が声をかけたこと。
過去の友達の影響で嗜む程度にアニメを見る和が本当にたまたま見ていたアニメ関連のグッズをたまたま見つけた。たまたま。
運命か?
単純に面白いからアニメを見るという意識の和と違って由岐は、
「メカデザの美馬さんは神だ!!」
と初対面の人間にいきなり発言していまうガチヲタ具合。
いまいち意思疎通が出来ていない二人だが、ヲタ特有の
「そ、その作品がしゅきなら…こっこれもおもしろいでs…フフッ」
が発動して一気に急接近することになった。
アニメ関連の話でなければ二人の話が始まることはなかったんだな、という導入のエピソードから最高にうまくて最高にうまい!うまい!
由岐につきあう和という構図
アニメの話で接点ができた由岐と和、というわけで一人暮らしをしている由岐のアパートにアニメのDVDを見に行くことで二人の交流が生まれます。
大学で適当に知り合ったやつの自宅にいきなり行くって結構あるようでない話だが、宗教にだけは気をつけよう。
仕送りと同人誌の売上で生計を立てている由岐は和がアニメを見に来た日も締切に追われていた。
追われていたはずなのに、結局二人して見入ってしまって気がついたときには揃ってボロボロ泣いている。
由岐はこのときまで、和に対してまだ警戒心を持っていたようだが「感性が同じ」ということを確認してあっという間に信頼してしまう。
「お前名前なんだっけ?」
と再確認しているあたりめちゃくちゃ興味なかったんだなというのが伺いしれて面白い。
これでやっと、矢印の方向が
由岐→←←←和
程度にはなったが、由岐が和という存在を意識し始めるまではまだ時間がかかる。
ぜひ読んで味わってほしい。
- 恵体の由岐に服をかりたらダボダボでちょっとショックな和
- 同人誌のエ◯がクライマックスだから和のいるところでは書けない!という由岐
- 先にベッドで寝ている和を起こさないように潜り込む由岐
新井煮干し子作品について
新井煮干し子を読んでいて思うのが、本当にそこらへんを歩いてそうな子が突然こんなふうに発展していってもおかしくないんだなというどこか現実味を帯びた不思議な空間。
ある日、アパートの隣の部屋に住んでいる大学生の部屋から不思議な物音がする。
初夏の夜に開け放った窓からは二人の推し潜めたような声が聞こえててきて……
まあ!!!隣に住んでんのは若いニイチャンとネエチャンのカップルなんですけどね!!!
引っ越してきたときサランラップとジップロックくれたからいい人よ!
…悲しい、どこかにこんな賃貸はないんですか?
完全に話がそれたが、街で行き交う普通の男の子や普通のサラリーマン、なんでもないと思っているものにも実はこんな一面があるんだよ、と教えるように見せてくれるのが煮干し子先生の作品。
この気持のいい不思議な感覚を共有できる人とは私も仲良くなれそうだ。