「愛はそんなふうに大事にして大事にして、二人で何年も何十年も手をかけてゆくことで、いつかもったいなくて絶対に手放せない関係になるんじゃないですか?」
潔癖っぽい人や神経質な人も読んでいて共感できる、そして潔癖でも神経質でも人付き合いが苦手でも別にいいのかもしれないと思える優しくて心が温かくなる漫画です。
- 雑誌の編集で社交的年下男子・吉川(よしかわ)とお茶屋さんで働く潔癖ふわふわ男子・若葉のお話
- 潔癖神経質な不思議ちゃんにグイグイ迫ってガンガン脱がせる吉川の強心臓よ
- あたたかい心の交流が読みたい、生きるのに疲れている人にはオススメの一冊
公式あらすじ
日本茶専門店で働く若葉は、人間関係が大の苦手。30年間できることなら人と関わらずに生きてゆきたいと願っていた。そんなひきこもり思考の若葉に一目惚れをしたのは、社交的な年下男子・吉川。「俺と付き合って下さい」と突然の告白を受け、経験の浅い若葉の頭はパンク寸前……!? 難攻不落な若葉に、吉川の愛が入り込む余地はあるのか!?
『よろめき番長』のネタバレ感想
依田沙江美作品の中でも上位に入るほど気に入っている作品です!
まず、『よろめき番長』というタイトルがうますぎる。
『よろめき番長』わかぺー
若葉は人付き合いが苦手で潔癖症で神経質で、
話している人を不安にさせるほど苦手な態度を表に出してしまうし、
好きな人だろうがなんだろうが汚いものは汚いし、
シャツのボタンはぴっちり上まで閉めないと気がすまないし、
他人がいるところでは眠れもしない。
一体何重苦なんだわかぺー…
生きているだけで「よろめき」まくっている一方で、周りの人間の気持ちは特に考えない「番長」気質も持ち合わせているところがコレまた面白い。
吉川との出会い
そんなふうに30年間も、きっちりきっぱり生きてきた若葉だけど、ある日店の前を掃き掃除している最中に自転車で歩道を走っていた吉川を転ばせてしまう。
勢い余って車道に飛び出していった吉川は運良く車にひかれはしなかったものの打ち身にゴリゴリの擦り傷とまあまあな怪我をしてしまう。
「人生終わった…」
と貧血を起こし自分が事故にあったかのように真っ青になる若葉に吉川は
「大丈夫ですか」
と声を掛ける。
ああよかった生きてる、そっちが歩道でチャリを飛ばしてたんだ、病院くらい一人で行けるだろ…と心の中で悪態をつきながら若葉はとりあえずお茶を入れてあげるんだけど、
「そもそもチャリで歩道を走っていた俺が悪いんだし」
と吉川が言った瞬間、ニコー^^と満面の笑みを見せてしまう。
それを見逃さない吉川はそこからどんどん、この難攻不落のめんどくさい男に手間ひまかけるようになってしまうのだった。
二人で落とし所を見つけようという愛情(?)
主に吉川が頑張る本です!!!
だって、わかぺーはもう妖精さんだから人間との交流は難しくって大変なんだもん。
その不思議な妖精さんの何を気に入ったんだか、吉川はなにかと接点を作っては若葉を連れ出してグイグイ接近してくる。
グイグイ行かなきゃ全く何も進展しないのだから仕方がない。
潔癖の人間と粗雑な人間なんて現実で見れば水と油のようなもので、一緒にするのもなにか恐ろしいことになりそうで遠ざけておきたいような存在なのに「好きあってしまう」ということはそれすらも問題にさせない。
「俺に触ったら除菌ティッシュで手を拭けばいいんだよ」
と提案する吉川も、
「汚いのに触りたくなるから困るんです…」
とほぼ素直に白状してしまう若葉も、
人間味あふれるキャラクターたちだ。
潔癖であるとか、人付き合いが苦手だとか、大人になればなるほどできる限り人前では隠そうとしてしまう。
「腐女子」であることも隠している人がほとんどではないだろうか。
「腐女子ってそんなに悪いこと?」
といつも思ってしまう。
社会的にマイナスとして受け取られるそれらの要素だが、それらを含めて自己を構成していることは何の間違いもない。
それを含めて自分なのだと大きな声で言える人が身近に一人でもいる。
若葉はこれから新しい道を歩むだろうと心が暖かくなった。