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🐨神社・寺・協会の跡取りボーイズ|絹田村子『さんすくみ』|そんなにふわふわ生きてて大丈夫!?

「僕たちは、この町の中にあって3点で結ばれるように存在する、神社・寺・教会のジュニア世代である」

絹田村子「さんすくみ」

『さんすくみ』の評価
ストーリー
(5.0)
キャラクター
(5.0)
宗教
(5.0)
総合評価
(5.0)

可愛い男の子がわちゃわちゃしてるのが大好きです

そんな幸せが見られる漫画『さんすくみ』は前日譚1冊+本筋10冊からなる全11巻で構成されています。

絹田村子の連載作完結記念で各所読み放題になっているようなので読み返し記念に感想を。

ざっくりポイント
  1. 神社・寺・教会の跡取り息子たちが一人前になるまでの「さんすくみ」時期を描く
  2. 神社・寺・教会のそれぞれの日常が勉強できる
  3. 「君」付けで呼び合う所詮お坊ちゃまのゆるゆるな日常に癒やされる

公式あらすじ

新感覚のライトな宗教コメディ

フラワーズの新星・絹田村子が放つコミックス第二弾!「読経しちゃうぞ!」で大ブレイクした絹田村子が「さんすくみ」と題して本格連載を開始。神主の息子・恭太郎、住職の息子・孝仁、牧師の息子・工のへたれ三人組をさらに徹底して描いていきます。
世間が思っているほどラクじゃない宗教法人ならではの喜怒哀楽の日々。もてそうでもてない苦悩。跡継ぎの重圧。失敗の許されない儀式。今日も憂鬱な日々が始まる!?

(『さんすくみ』絹田村子)

絹田村子『さんすくみ』のネタバレ感想

感想ポイント
  1. 個性が強すぎるお坊ちゃんたちの日常
  2. 「さんすくみ」って?
  3. モラトリアムは終わってしまう
  4. 絶妙なコメディと日常の配合で癒やされる漫画
  5. おわりに

個性が強すぎるお坊ちゃんたちの日常

永室神社の息子・相澤恭太郎、九誉寺の息子・伊波孝仁、秋日野教会の息子・綾本工の三人が織りなすドタバタ和やかコメディ!

ドラマにしやすいと思うんだけどなかなかならないね。華がないから?

ちょっと三人とも個性が強すぎるので箇条書きで紹介します。

相澤恭太郎

  • 一番気が弱そうに見えて三人の中では頑固者の恭太郎
  • 甘いものが大好きで鍋いっぱいのおしるこを一人で食べたりする
  • 霊的なことは一切感じない
  • 一人っ子で、めちゃくちゃ怖い母親とぼんよりした父親がいる(父親似)
  • 色んな所で運が悪い、大凶を引いたり大雨を振らせたり頻繁に不運に合う
  • 家業ゆえ女の子に振られがち

伊波孝仁

  • しっかり者に見えて思い込みが激しく失敗しがち
  • 三人の中で一番常識がある。
  • 工君に惚れている可愛い妹がいる。
  • 竹を割ったような性格の父親と浪費家のお嬢様な母親がいる
  • 現実の人物と同じくらいに霊が見えるので誰も見えない人に話しかけがち
  • 神社と同じく彼女に苦戦

綾本工

  • お父さんがドイツハーフなので工君はクォーター
  • 容姿がよくて優しいので女の子にもてるがスプラッタやホラー・オカルトの趣味ゆえ引かれる
  • 三人の中で唯一の学生、大学院で宗教学を専攻している
  • ひねくれ気味(?)の弟がひとりいる
  • 行動派なので三人を動かす役目

以上個性が爆発している三人の紹介なんだけど、まだまだ書ききれないことが…

こんな三人が京都を舞台に頼り頼られ、まだ半人前の時期を過ごしていきます。

実際に家の仕事をしっかり手伝っているのは、神社の恭太郎と寺の孝仁で工はまだ大学に通っているので教会の仕事はイベントのときくらい。

それでも特殊な環境の三人には日々いろんな問題が沸き起こってきて…いや別に重大な問題とかではないところがミソなんで、恭太郎の神社の御朱印ストックを鹿に食われて困ってるとかお祓いで呼ばれたはいいものの生霊がついてて神主にはどうにも出来ないから二人を呼ぶとか…はい、何を隠そう恭太郎推しです。

三人共なんだかんだいいながらお坊ちゃんなので(地元の有名な私立中学で出会う)ギスギスしたところが見られないのも読んでいて癒やされます。

ぼんやりふわふわ三人で支え合いながら生きているこの三人、タイトルの「さんすくみ」がぴったりはまる関係性。

さんすくみって?

本来は、お互いがお互いに苦手と得意を持ち合っていて身動きできな〜い、という状態ですがこの三人の場合は、お互いにお互いが必要で身動きできない状態です。

しっかりしろ跡取り息子

未熟な部分を埋めあって互いに互いを支え合ってるというと聞こえがいいかもしれないけど、なんかこの三人の場合情けないことが多すぎて笑ってしまう。

特に、そのへんの女の子より繊細でか弱いところがある恭太郎と孝仁はそんなんでいいのか!?というお仕事具合。

でもそれがすごく癒やされるんですなこれが。

落ち込んだときに読むとなんか、あーまいいか、いいや、って思えてくるのでもうちょっとぼや〜っと生きるのが人間の真理なのかもしれない。

モラトリアムは終わってしまう

この三人の「さんすくみ」は強い女性たちの登場によってゆっくりと終わってしまいます。

彼女が出来たり告白したり結婚したり子供が出来たりすごい悲しい…悲しいよお…

読み終えた時は息子が巣立っていったような気持ちになりました。

しかしなあ、BL漫画を読んでいてよく思うことだけども

「この二人は数カ月後絶対一緒にいないな」

というババアのおせっかい感情がこの漫画を読んで昇華されたような気持ちにはなったんだ。

モラトリアムの期間を書き出したBL漫画がやっぱり好きだし、業界的に底のほうだけどもっと一般に負けないくらい盛り上げていきたい。

絶妙なコメディと日常の配合で癒やされる

この三人の不思議なところは、毎回毎回問題を抱えている人物が変わるたびその三人共が

「もう◯◯◯君はしょうがないなぁ〜」

と思っているところである。

みんなしょうがないよ!!!しっかりして!と思いながらもその支え合いが優しくて面白い。

特に好きなエピソードをひとつ紹介したい。

3巻に収録されている第15話

ある暑い夏のこと、恭太郎の神社では特に行事もなく地鎮祭などのお祓いが数件舞い込んでくる程度。恭太郎はその日井戸祓いを任されていた。

お祓いを依頼された家に到着すると、慌てて飛び出して来た奥さんやその子どもたちに不安げな顔をされ

「若いから不安がられている…」

とショックを受ける恭太郎…しかし仕事は仕事!ということできっちり井戸祓いを済ませたのだが、なにやら依頼主には他にも気になっていることがある様子。

「主人の部屋の隣…幽霊が出るんです!」

なにやら様子がおかしいのはそのせいだったかと納得したはいいものの、恭太郎には霊感がさっぱりないのだ。

困り果てた所で「見える人を呼べばいい」と気がついた恭太郎は、お騒がせコンビの孝仁と工を呼び出した。

「ここには何もいないよ」

来てすぐに二人共口を揃えてそういうので不思議に思いながらもお祓いを済ませた所で、家の主人が帰って来た。

「神社の方ですかな!!?申し訳ないがお帰り願いたい!!!」

初対面とも思えない形相で突然三人に向かってまくしたててきた。

どうやら主人には内緒の依頼だったようだ。

仕方がないので退散しようとしたその時、孝仁と工が口を揃えて

「あ、見ーつけた!あなた生霊が付いてますよ。OLで勝ち気な感じのロングヘアーいつも小指にお気に入りの指輪をつけた若い女性が!」

二人に悪気はない、思わず見つけて思わず口に出してしまった。

二人の言葉で父親の不倫が発覚してしまった家の中は氷のような空気に…三人は真っ青な顔でその場から逃げ帰りましたとさ、めでたし。

見えないからって、寺と教会の息子を呼んじゃう恭太郎が最高におバカだ。

のこのこやってきて結局いらないことを言ってしまった二人の未熟さも面白い。

めちゃくちゃな雨男・恭太郎が雨を振らせないと思ったら、血の雨を見ることになったというエピソードでした。

おわりに

少女漫画とBL漫画はどちらも切っても切れないつながりがあると常々思っている。

どちらも作者はほぼ女性だ。

女性から生み出される女性のための漫画たちは強烈に鮮やかで強烈に私の心を揺さぶる。

そんな漫画をこれからも読んでいきたい。