BL界でミスリードといえば今市子だと思っているんだけど、草間さんの構成力で織りなすミスリードもすごく秀逸。この人の作品には極悪人が出てこないから安心して読める。つまりすごくいい短編集だったと言いたい。幸せが深い。
収録作は以下
- 幸せの条件
- カレシの習性
- おかしな男
- されど美しき日々
- あらかじめ消える世界
- 愛と秘密の記録
- 銀杏のはなし
- 根岸の誕生日/あとがき
表題作になっている「幸せの条件」と「カレシの習性」がシリーズ。
あらすじ
主人公は根岸、優しさで出来た男。ある日帰宅すると自宅のアパートが全焼、唖然とするがはっと思い出したのは窓伝いに遊びに来ていた猫の存在。逃げたのか!?やじうまを見渡すと白い猫をかかえた男。話を聞くと向かいのアパートに住む諏訪と名乗り、とっさに助け出したが飼い主ではないという。
はい、根岸×諏訪ですね。
この諏訪という男も、ふわ〜っとして根岸と同族か?とおもうのだけどそんなんじゃ話が進まない。違和感のない諏訪の立ち回りによって根岸はどんどん巻き込まれていくわけだ。うまいな〜と思ったのは、「幸せの条件」のラスト、諏訪が猫にご飯だよと茶碗をスプーンで叩いて鳴らしてみせる場面。根岸はあれ?この音知ってるぞ?となるのだがさっと切り替わってしわせな食卓を囲む。読んでる方はもうゾワッっときてるのにちょっと!のんびりご飯食ってる場合!と突っ込んでも話はそこで終わり。この伏線の回収が「カレシの習性」に入ってくる。