「純愛ねえ、そんなの童貞と一緒に捨てたわよ…インターネットも無い時代にね。」
読んでいてこんなに心の軽くなるBL漫画ないでしょなにこれ。
イシノアヤが描くほわほわ〜ふわふわ〜も癒やされるけれど、これはもう完成されていたと思っていたことが更に変化の余地を残していた気持ちよさというかその手のたぐいの癒やしをもらいました。
二人合わさって倍々になるって最高の恋愛。
- 高坂恭一(35)趣味は園芸・図書館通い×稲森優(24)社交的マイルドパリピの究極純愛
- 高坂の人物像が田舎のおばあちゃんみたいで安心する…と思いきや突然ケダモノに!
- 否定し合うこと無く相手を受け入れる癒やしの物語
ネタバレまとめ
試し読みのチョット先までご紹介
終業後の会議室で男が一人スクリーンの前に立ちプレゼンをしている。
「前年対比、売上105%純利益120%。これは同期社員の中でも三位の成績になります。現在大口の案件に携わっていますので次年度はさらなる結果が期待できます。」
そのスクリーンと男を眺めさせられている男は高坂恭一35歳、経理部の主任を勤める。
「また家族構成ですが、両親ともに公務員で5人兄弟の三男になります。すでに孫が5人もいまして自分へのプレッシャーはありません。まあ家族もうすうす気づいているかと」
“俺は何を売り込まれているんだ…?”
ぼんやりと口を開けてプレゼンを聞いていた高坂は、とりあえずスクリーンにENDという文字が映し出され手を上げた。
「えっと…稲森君…俺今口説かれてたのかな?」
「趣旨は伝わったようですね。よかったです。」
「趣旨ったってさあこんな事急に言われても…」
「ですよねえ、突然呼び出してすみません。でも高坂さんとは部署も違うし話す機会もないから、いっぺんに僕のこと知ってもらいたくて…僕プレゼン得意なんです。」
スクリーンにはでかでかと「高坂主任が稲森優と付き合うことによる10のメリット」というタイトルが表示されている。
「期限はいつ?」
こうして、稲森の提案を一度受け入れてしまった高坂の運命は突如様変わりを見せることになる。
受け入れることにしたとは言っても高坂と稲森は10近い年齢差のせいかその生活はなんともかけ離れて特に高坂については地味なものであった。
朝起きて洗濯をし、猫に餌をやって、ひじきや煮浸し煮しめに辛子和えなどの食事を作り、たまに趣味の庭いじりのためにホームセンターへでかけ、図書館で予約していた本を借りて帰る生活。
そんな代わり映えのしないつまらない毎日を送る自分のことを高坂自身もつまらないと思っている。
だがそんな高坂の性質が稲森には堪らないようで…
ネタバレ感想
たいっっっへんよかったです。
ココ最近の当たりの確率が高いですがこれは本からマイナスイオンが出てるの?という気持ちよさ。
あ”〜…ぎも”ぢいぃ〜…
- 童貞喪失した高坂が会社でも暴挙に出るほどハマっちゃう(高校生か?)
- イケイケだった稲森が何も知らない高坂との純愛にハマっちゃう
- 猫が可愛い
展開がうまい
タイトルでネタをぶっこんできてるのでそれに引っ張られていってしまう内容だろうなと予測して読んでいたのですが、二転三転して、あっあっと言っている間に終わってしまいました。
構成の力がすごい。
まずプレゼンがあって、その後に高坂主任は
「なんで俺のこと好きなのか全然わかんない〜マジ謎〜」
ってあっさりメモ用紙一枚でふってしまいます!!!こら!!!
しかし、そこで相手が強引に来るのではなく仕込まれていた高坂の同期で企画営業課、つまり稲森の上司・田中課長が飛び込んできます。
「もっとちゃんときいてやれ!」
という彼にはきっと、面白半分+同期が心配+部下がかわいいと言うようなちょっとアレな感じも見て取れますがそれでも稲森の恋がうまくいくように二回目のプレゼンを取り付けてくれます!
それで結局二人の、
「押せ押せ!イケイケ!」
でなんかよくわかんなくなっちゃった高坂は、
「ひょっとして、俺が知らないだけで、この人達にはこうゆうの普通なのかな…」
と洗脳されてしまい、その場で「考えておく」と返事をしてしまいます!!!
普通なわけ無いでしょ!!!と読者の心のツッコミを代弁してくれる役目の高坂弟がいるのもまた楽しい。
という感じであれよあれよと言う間に巻き込まれていった高坂さんは、稲森くんにLINE交換しよ!と言われて化石のようなガラケーを見せたところ
「スマホ買いに行きましょう!!!」
とあっさりデートの約束までしてしまいます。
そのデートの最中、とにかく一人で生きてきた高坂は知らないことだらけの稲森くんとのデートに戸惑いっぱなしで
「この葉っぱ虫の味がする!」
とか言ってるんですが、自分のテリトリーに入った途端に稲森くんの存在をすっかり忘れてしまいます。
ホームセンター通いが趣味って可愛いな。
高坂という男
この高坂さんの人物像が実にいい。
本当に居そうで身近にはいないタイプの人間ですごく旨味がありました。
高坂さんと弟のお母さんは愛人をしていて早くに亡くなってしまったのですが、京都の下鴨神社のあたりに一軒家を残してくれていて弟と二人(弟はフラフラいないけど)暮らしています。
ちょっとこの下鴨神社のあたりに住んでいるとかミーハーなので羨ましすぎる。
森見登美彦マニアの方はいらっしゃいませんか〜!!誰か〜!
高坂と稲森、二人の凸凹がうまく合わさる。
正反対と言ってもいいくらい性質の違う二人がうまく凸凹を合わせて一緒にいられる事になった理由は唯一つ、
「相手を否定せず、受け入れる」
ということだなと感じました。
稲森は高坂の園芸はいいとしても図書館通いになんてひとつも興味が無いだろうけど何も言わずにニコニコ付き合ってくれる。
高坂の好きなものならなんでも好きってか!
そして、どちらかと言うと問題がある方の高坂は自分で考えて旅館の料理や身体の関係に答えることなど自分にできることをやってみるんだけど、なにかうまくいかない。
稲森のためにすでに自分ができることをするという選択よりも最後に受け入れて自分も前に進んでいくという方法を選んだ高坂はなんか今後めちゃくちゃモテてしまいそうだなと不安に。
稲森くんも長くて半年しか付き合ったことがないらしいし…末永く日本のどこかで暮らしていってほしい二人でした!